新人の間は薬の名前と効能効果を覚えるだけでも大変です。そんな新人薬剤師さん向けに、「まずはこれだけ覚えよう!」というお薬の情報をまとめました。
泌尿器科で男性に処方されるお薬。その中で最も多いのが、前立腺肥大症に関連するお薬です。
前立腺は、男性の膀胱の出口にあって尿道を取り囲むようにしている器官です。前立腺肥大症は、前立腺が大きくなって尿道(尿の通り道)を圧迫し、『尿が出にくい』『尿の勢いが弱い』『尿が近い』『尿が残った感じがする』などの症状が出る病気です。
前立腺肥大症は、年齢が高くなるにつれて有病率が高まり、70歳代では10人に1人以上が前立腺肥大症と診断されます。
前立腺肥大症に処方されるお薬、メインは2種類、3薬剤だけ。まずはこれだけ覚えて自信をもって服薬指導してください。
最低限覚えたい前立腺肥大症のお薬3つ!
- ユリーフ(シロドシン)α1アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬)
- ハルナール(タムスロシン)α1アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬)
- アボルブ(デュタステリド) 5α還元酵素阻害薬
薬剤名(一般名)で表しています
この3つを覚えましょう。たった3つ?と思ったあなた。たった3つなら覚えられそうでしょう(^^)
前立腺肥大症のお薬 特徴
α1アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬)
α1遮断薬は、前立腺と膀胱頸部の平滑筋緊張に関係するα1アドレナリン受容体を阻害して、膀胱の出口を狭くする働きを弱めることで、前立腺肥大症による症状を軽減します。
症状の改善は比較的早く現れます。
主な副作用としては、起立性低血圧(めまい)、射精障害、鼻づまりなどがあります。
他の副作用に、術中虹彩緊張低下症候群があり、白内障手術などに影響を与える恐れがありますので、眼科の主治医に伝えることが必要です。
患者さんには「膀胱の出口を広げて、尿を出しやすくするお薬です」と説明できます。
薬剤名(一般名) | 用法用量 |
ハルナール(タムスロシン) | 1日1回、0.2mg 適宜増減 |
ユリーフ(シロドシン) | 1日2回、1回4mg 適宜減量 |
5α還元酵素阻害薬 アボルブ
男性ホルモンの一種であるテストステロンが前立腺に取り込まれると、5α還元酵素によって活性型の5αジヒドロテストステロン(DHT)になり、前立腺の肥大に関与します。5α還元酵素阻害薬はDHTの産生量を低下させて、前立腺を小さくすることで症状を改善します。
効果発現には6ヶ月程度かかるので、α1遮断薬と併用されることが多いです。
主な副作用としては、勃起不全(ED)、射精障害、女性化乳房などがあります。
また、前立腺がんのマーカーであるPSA値を半減させるため、本剤服用中はPSA値を2倍にした値を目安にします。
薬剤名(一般名) | 用法用量 |
アボルブ(デュタステリド) | 1日1回、0.5mg |
5α還元酵素阻害薬には、アボルブ(デュタステリド)の他プロペシア(フィナステリド)がありますが、前立腺肥大症に適応があるのは、アボルブ(デュタステリド)だけです※。
※プロペシア(フィナステリド)の適応は、男性における男性脱毛症です。
まとめ
前立腺肥大症のお薬について、これだけは覚えよう!という内容をまとめました。千里の道も一歩から。一緒に学んでいきましょう。
分類 | 薬剤名(一般名) | 用法用量 | 特徴 | 副作用 |
α1遮断薬 | ハルナール(タムスロシン) | 1日1回、0.2mg | 尿の出口を広げて尿の出を良くする | めまい、射精障害 |
同上 | ユリーフ(シロドシン) | 1日2回、 1回4mg | 同上 | 同上 |
5α還元酵素阻害薬 | アボルブ(デュタステリド) | 1日1回、 1回0.5mg | 前立腺を小さくする | 勃起不全、女性化乳房 |
参考資料
・前立腺肥大症診療ガイドライン 日本泌尿器科学会 編